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第73話 「草」の感覚
桜の花が咲く頃私は多摩川の川岸を歩いていた。流木を探して・・・
「漢字に楷・行・草があるように、庭にも真(楷)・行・草という3つの格がある。」最近の建物と庭のバランスが悪いと嘆くお客様からお聞きした言葉である。といってもかつて教鞭をとられていた大学教授の方で、植物や造園のご専門であった。「真」とは実体が厳格に完備したもので、それがやや砕けて軟らかな形式になったものを「行」。さらに省略化され軟らかさを増したものを「草」といい、これら三つを合わせて、形式的に変化する三つの格を真・行・草と呼ぶらしい。私は先生とお会いする度にリフォームの営業というより、そんな日本庭園の話や植物の育成、そこから発展した人材育成論に及ぶまで、心地よい庭を眺めながらある意味特別講義を受講していたようなものであった。 さて、流木であった。これは私が営業として、設計・工事を一貫して行っていたころ、陽当たりの良い和室の改装依頼を受けた時の話である。依頼の内容はこのようなものであった。和室というものは陽が燦燦と注ぐ南に面してはならず、北向きで暗くなくてはならない。諸事情があり南西の位置で我慢していたが、今更北側には移動できないこともあり現在の位置で遊び心のある暗い和室にし、寛ぎたいとのご要望であった。長押、鴨居、敷居、縁甲板は黒、柱は赤、襖紙は市松模様で、襖縁は黒。その様なオーダーが続く。とにかく何度か打ち合わせを重ね、その場でスケッチを描きイメージの共有を図った。低コストのご要望もあり、仕上げについてはあらゆる知恵を絞ったものである。そして極め付きは床柱であった。高額な銘木を使用するのでは無く、遊び心のあるデザイン。思考結果、流木に辿り着くのであった。それは絞り丸太に流木を絡めた造形、まさに「草」の感覚である。 流木を求め、桜色に染まった河岸で自然の造形を楽しむ。そこでは現代美術館より面白い世界が広がり、関心と発見の連続であり、対話がある。「草」の感覚、3つの格は今でも私の思考の原点であり、キーワードでもある。 三井ホームリモデリング株式会社 業務推進グループ 貫井 達雄 〒162-0825 東京都新宿区神楽坂1丁目15番地 神楽坂1丁目ビル8階 TEL:03-5261-1936 FAX:03-5261-1941 E-mail:t-nukui@mitsui-reform.co.jp
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