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第66話 「プロの視点」か「お客様の視点」か?
リフォームプランを練る時、当然お客様から事前ヒアリングをした上で、「希望」「要望」「意図」といったものを、どう折り込んでいくか。提案者は、自分の頭の中でイメージを繰り返しながら設計内容を固めていきます。「必ず期待以上の提案をする」という、プロとしての意地とプライドを掛けてお客様と対峙する事になるわけです。その一連作業の中では「お客様の意図に隠された欲求の汲み取りが一番大事」で、欲求をかなえるための空間イメージをプロとしての知識やアイディアを盛り込んでプランにまとめた結果、お客様の当初の希望・要望とは異なる提案内容となってしまう事が数多くあります。
しかし、そうした場合も大概は好い評価を頂戴することになり、つい「プロの奨めるリフォームがお客様を幸せにする」と思い上がりがちです。 ある三世代同居リフォームの案件でしたが、ご夫婦、奥様のご両親、お子様二人という6人家族で、木造二階建ての一軒家、一階の半分を利用して自営業をされており居住スペースとしては20坪程、その中で「快適空間」を実現したいとの相談を受けました。 ヒアリングの主人公は奥様で、とにかく「リフォームへの夢」の中にいらして多くの希望を漠然とお持ちの方でしたが、こちらがお客様の希望が高ければ高いほど「燃えるタイプ」なのを見透かすかのように、うまく操縦されながらの折衝スタートとなりました。 当初のプランは、商売スペースとの繋がり、生活導線の整理、プライバシー等、一人一人の動きとくつろぎ方を重点テーマに、上下階で世帯を分け、2階に共有リビングがあるシンプルモダン仕様でご提案しました。 ところが、奥様には好評だったものの、現在の住まい方に対するイメージからその時ばかりは家族投票が行われ、共有リビングは「一階がよい」との意見に傾き、あえなくファーストプレゼン案は撃沈。さて困った。アクセスコアを失ったプラン。でも、「2階にもリビングは必要」とする声があがり、益々迷宮へ。 「こんなに難しい仕事は、やはり私しか出来ない」と意味不明な自負の念に駆られつつ、何とか要望通りの間取りはカタチとなり、いざ着工の運びとなりました。その時点で私は、契約工期に間に合わせようと、それまでの「リード役」から「要望第一」主義に変身し、次々に塗り替えられる要望事項に全力で応えながら工事を進めていきました。 そして無事、引き渡し。リフォームの出来栄えにはお客様も大変喜ばれ、当初プランの残像を別にすれば当方も「いいリフォームをご提供できた達成感」を味わう事ができました。 ただ、部屋毎に違う内装仕様や、盛り込みすぎた感のあるデコレーションなどの詳細部分に関して、担当者として少し引っかかったのも事実で、「お客様の要望にベストで応える」事は良し。しかしその一方で、イロイロ住宅を見てきたプロとして5年後、10年後を考えると仕様イメージの統一や、間取りについてもっと進言すべきだったのではないかという迷いもあります。 提案者のエゴや、勝手な自己満足と言われればその通りですが、何といっても高額な投資をされるのは結局、「お客様」。 「プロの視点」と「お客様の視点」、ウエイトバランスがをどの辺りで決着させるのがお客様にとって最大価値なのか? あー、難しい。 株式会社東急アメニックス 技術本部 技術開発部 商品開発課長 安光清志
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