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第28話 手垢のついた古臭い未来とは永遠におさらばだ!!
ある人がある斬新なSF小説の書評でこうお書きになったことがあります「これで手垢のついた古臭い未来とは永遠におさらばだ!」なんとも意味深いというか、意味不明というか、ただこの一文は私の記憶のどこかに焼きついて、「現状の延長線上の想像可能な未来なんてつまらない」とか「自分で考えうることは、既に知っていることの組み合わせで新しいようで古臭い」という解釈を付け加えてゆくのでした。
部屋を改装するにあたり、自分が今までに知っている既製品をベースにああしてくれ、こうしてくれと依頼すると確実に想像可能な古臭い未来がやってくると思ったわけです。 そういうわけで、わがまま聞いてくれそうな独立系の建築家の先生に、なるだけ既製品は使わないで一点物で作ってくださいとお願いしたのでした。そして、私は家の改装が終了するまで期間とても楽しい時間を過ごすことになったのです。 依頼段階では細君も建築家である先生夫妻と食事やお酒を飲みながらとりとめのない話ばかりしていました。 どんな話だったかというと、たとえば、小さいころに過ごして非常に印象に残っていた田舎の祖父や祖祖父の家の話、明治や大正に建てられたそれらの家はガラス窓や障子、台所にいたるまですべて一点もので家全体とみごとに調和がとれているのでした。 酔いに任せて、家電のデザインの話や料理、音楽の話など、ほんとに取りとめなかったのですが先生もシンプルなものが好きだということがわかり、私としてはどのような設計になるのかワクワクして待つことになったのです。 できあがった図面をもとに説明された新しい部屋はとても気持ちのよさそうなシンプルな空間でした。おもいっきり気に入った私はその後もまた楽しくまったりとした時間を過ごすのです。 それは素材の選択でした。施工前、施工期間を含め何度も先生のお宅に招かれ細君の料理に舌鼓を打ちながら杯を酌み交わしたのでした、いちよう打ち合わせです(笑)。いままで見たことのないような一点ものという私の希望と予算や組み合わせを考えていくつもの提案がありました。私はまさにそのときはじめて見る、そして想像もしていなかったような素材をいくつも見てそして直に触ることになるのです。これがまたなんともヒジョウにオモチロいのです。 気持ちがよいというのはなんとも微妙な感覚なのですよ。たとえば海に出かけたとします、その日の空気の湿り具合や気温、風の吹き具合で同じ海にまったく違う感覚を受けるように。素材の質感や肌触りなど提案された素材は単体とすればどれも捨てがたいのです。ただその素材の組み合わせは家全体の気持ちよさになんともまったり影響するわけですね。 まあ、人間の感覚というものはどうにも他人には伝えようも無いもので、イロイロと語り合うのですが、どうにも私と先生夫妻、三人三様が想像する感覚はあやしげに織り交ざりながらほろ酔いの夜は更けてゆくのでありました。 そんなわけで、なかなか決められない私を先生は素材サンプルと共に施工中の現場に連れてゆくのです、これがまた面白い、いままで図面で見ていたものが形になりつつあるのです、その中にいるとなんというか芸術家のごとく全体のイメージがふつふつとわいてくるのですよ。このような状況におかれた私はいつもの踏ん切りのよさで明快(冥界)な決断をくだし、自らが描いたイメージに対して自己満足するのでありました。 まさにとりとめもなく綴ってきたのですが、完成した部屋はまさにシンプルでかつ独創的。 そして私もつぶやくのでした「これで手垢のついた古臭い未来とは永遠におさらばだ!」(笑)。 P.S U設計室の臼井夫妻へ 住み始めて2年が経ちますが、毎朝起きた時、毎晩家に帰って明りをつける時、絶えず気持ちよさが持続しています。ほんとうにありがとうございました。
神奈川県横浜市青葉区
第20回「住まいのリフォームコンクール」 マンションリフォーム特別賞(尚明賞)受賞作品 施主
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