
|
第25話 バリアフリーとユニバーサルデザイン
先日、ある食品メーカーの工場見学コースをユニバーサルデザイン(UD)化する改修工事をお手伝いした。結果としては、手すりの設置、段差の解消、表示サインの見易さの改善がなされた。この改修工事をバリアフリー(BF)と呼ばずに、あえてUDと呼ぶ根拠は何であるかを考えさせられる仕事であった。
昨今、リフォーム工事においても、BFに代わってUDという言葉が使われる機会が多くなったように思う。それに伴って、両者の言葉の使い分けがあいまいになってきていることを感じる。言葉の定義は重要ではなく、ユーザーが満足する良いものができればそれでいいのだが、それでも「BFとUDの違いは何ですか?」という質問は相変わらず多い。 BFとUDの大きな違いは、対象とするユーザー範囲と解決策の提供のしかたにあると考えられる。BFは、特定の障害をもつユーザーに対して「改変や付加」「技術による自立支援」「人手による支援」によって解決策を提供する。これに対して、UDは多様な年齢・性別・能力をもつユーザーに対して、特別な支援にたよらない「一般解」として解決策を提供する点に特徴がある。 UDのユーザーを「障害者」「高齢者」と狭義あるいは分節化してとらえてしまうという間違いはよくみうけられる。このようにユーザーを分節化してとらえる考え方は、UDではなくてBFと呼んだ方が適切であろう。UDでは、「年齢・性別・能力の如何にかかわらず使える」と表現されるように、ユーザーを区別せずに「自分を含めて連続的に存在する全ての人々」をユーザー範囲として考える志向がある。これには、UDの発祥国であるアメリカが、典型的な多民族国家であるが故にかかえている「差別撤廃の思想」が背景として見え隠れしている。 将来、UDのユーザー範囲が民族や地域というレベルまで限りなく広がっていくことも考えられなくはない。もしこうした拡大解釈がなされるのであれば、ユニバーサルデザインではなく、グローバルデザインとでも呼ぶべきかもしれない。しかし、実際には、UDは地域や文化によってそれぞれ異なる取り入れられ方をして発展していくと予測される。今後、日本では日本型UDについての解釈と合意形成をしていくことが必要であろう。
文化女子大学 造形学部 住環境学科
助教授 渡辺 秀俊 東京都渋谷区代々木3-22-1 TEL/FAX 03-3299-2384
┃
よもやま話バックナンバー
┃
よもやま話 最新号
┃
|