住宅リフォーム推進協議会 リフォームよもやま話

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第12話 「リフォーム」と「テーマ」
 さる病院のリフォームをした話です。もう20年以上も昔のことですが、増築と既存の改修工事でした。すべてが完成すると100床を越える程度の、地方都市の中核個人病院です。病院の増築とリフォームの「テーマ」は『明るさとやわらかさ』でした。とにかく明るい色使いでした。基本設計は建築家がプランを練っていましたが、色使いが一部、幼稚園のように見えたと言ったならば、想像できるでしょうか?

 今では時効ですが、2Fロビーの天井の仕上げをどうしようか悩みました。思いついた場所が問題でした。ある夜のことです。一人、スナックで水割りを傾けていました。本当に、一人寂しく飲んでいたんです。その時、見上げた天井の仕上げが問題だったのです。岩面吸音板のキューブ(四角)が何とも言えず落ち着いて見えたのです。これが2Fのロビーの天井向きだなとその時は感じました。落ち着いた壁のクロスと共に静かなたたずまいを演出できると思いました。

 しかし、病院が完成した時、完全にその空間だけが異質でした。失敗したと思いました。でも、もう遅かったのです。病院側からは、何ら注文は出ませんでした。むしろ病院側からは、誉め言葉ばかりでした。柔らかいグリーンを基調とした病室、標準的な仕上げの診療部門、そして所々幼稚園を思わせる明るい派手な空間。。。。もっとも、院長を感動させたのは白を基調とした外壁にブルーのライン。外装の足場をバラした時の院長の感動の涙が忘れられません。しかし、ロビーはどこかのスナックかクラブみたいなんです。赤面ものでした。

 それから16年近く経てのことです。完成後、数年間は時々行ったのですが、2Fのロビーはいつみても異質な空間に感じました。その後、しばらく足が遠かったのですが、久方ぶりに行く機会がありました。基本的には完成時のままの状態が保たれていました。16年の歴史がそのまま感じられました。そして、2階のロビーに行ってみました。入院患者達がなんとも言えない良い雰囲気を醸し出していました。老人達がゆったりと団欒しているんです。不思議ですね。何故か、以前ほど違和感が感じられませんでした。建物全体を覆っている16年間の年輪が違和感を消し去っていました。そして、「テーマ」であった『明るさ』がまったく無くなっていました。新たなリフォームの必要性を感じた次第です。

 新築でも良いのですが、リフォームをする前提には、そこに生活をする人の思想を見極める必要がありますね。こういうリビングが欲しい。ああいった寝室が欲しい。といった考え方はどこにでもありますが、どういう生活をしていたのか?これからどういう生活をするのか?これを会話の中からつかみ取っていく必要があります。リフォームをするきっかけもあるはずです。家族構成が変わったとか、定年退職して生活スタイルが変わった、あるいは不意のお金が手に入って家を改装したい。なんでも良いと思います。そのきっかけから、リフォームをする必要性が出てきたはずです。

 そして、リフォームをするためには、共通認識としての「テーマ」が必ず必要です。「テーマ」と「生活のスタイル」は一致していなければなりません。リフォームに関わる人たちの方向性が「テーマ」から見えてくるでしょう。建主、設計者、施工者、それぞれが自分勝手な想いを描いて失敗した例はいくらでもあります。先に書いた病院の例でも、新たな「テーマ」を見つけだすことがまず必要となります。共通の「テーマ」が生み出されなければ、リフォームはスタートしません。
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松田秀章

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